相続時精算課税

・私の妻の母親は、父親に内緒で妻の名義で2500万円を銀行に預金していた。
・この通帳は銀行の貸金庫にあることを妻も知っており3年前に通帳を自宅に持ち帰っているが、届出印やカードもなく妻の意思では出金することが出来ない状態だった。
・妻の母親は81歳、父親は79歳。母親は最近認知症の傾向がひどい。
・私は、「この2500万円はいわゆる名義預金だから、母親が将来亡くなったときに、相続財産の一部として相続税を払えばよいだろう」と考えていた。
・ところが、今月(2013年7月)、妻が銀行に出向いて、自分の印鑑を届出印として届けたところ、簡単に登録できてしまった。従って、2500万円を出金しようと思えば出来る状態になった。
・妻には兄が一人います。妻の両親と私たち夫婦家族は別居です。

【質問】
(1)私が当初考えていた「届出印もカードもない状態では名義預金だから母親が亡くなったときに相続財産として申告する」という考えは、成り立ちましたか?

(2)妻があらたに妻の印鑑を届け出て登録できてしまった時点で贈与が成立して贈与税の支払い義務が発生するということになるのでしょうか?

(3)2500万円の場合、贈与税は50%だが、相続税の場合15%の税率なので、相続税の方が金額が少ない、と考えています。

(4)相続時精算課税の制度をつかうことによって節税できますか?すなわち、2014年の2月1日から3月15日の申告期間に届出をして、特別控除2500万円を2500万円から引くとゼロだから贈与税はゼロで、将来母親が亡くなったときに、他の相続財産と合算して基礎控除を超えた金額に対して納税するという考えかたは成り立ちますか?

(5)相続時精算課税の制度を使うとしても、父親や兄には内緒で、母親にもできるかぎりこの話題を出さないで進めたいのですが、どうすればよいでしょか?

奥様のお母様が、奥様名義で預金をされているということで名義預金ではないかとお考えのようですが、
気になる点としてこの2500万円の出所が問題になると思います。

お母様の過去の収入状況等は不明ですが、お母様がもし若くに結婚されておりずっと専業主婦であれば基本的にお母様の財産はないことになります。
この様な場合は、お父様の名義預金である可能性もあります。
ただし、過去に働かれていたことがあったり、ご自身の年金収入から貯蓄されたものであったり、
またはお母様が以前に相続や贈与でもらわれた財産であればお母様の財産として認められると思います。

以下は、2500万円はお母様の財産である前提でお話しさせていただきます。

まず贈与ですが、贈与は、民法上の契約行為になりますので、あげる人(贈与者)と貰う人(受贈者)の双方に意志表示により成立します。
民法上は、必ず書面で契約を交わす必要はなく口頭でも成立はします。

ただし税務上は、贈与であることが証明されなければ問題となります。
よって基本的には、贈与契約書を作成されることをお勧めしています。

贈与は双方の意思表示により契約が成立しますが、ご質問の文面からは不明ですが、お母様は認知症が患っておられるようですが、
奥様名義の預金をされた際に認知症であったなら贈与は成立していないこととなります。

また貰う側の奥様の方もこの預金がされた際に、貰ったという認識をされていなければやはり贈与として成立してないこととなります。

その他、贈与と名義預金の違いとしては、贈与であればその預金をご自身で管理していることが必要です。

具体的には、通帳や印鑑をご自身で管理していることです。
また口座の開設もご自身でご自身の印鑑を使用して行っていることが重要となります。

次に贈与された場合には、贈与された財産は、貰ったひとが自由に使えなければなりません。
よくアドバイスさせていただくことですが、貰った財産もたまにはご自身の為に使用していただくようお伝えしています。

なぜなら贈与された財産の口座がその後一切動きがなく預金利息のみついている状態であれば税務署からすると本当にこの財産は贈与されたものかと疑念が生じます。

これらのことを考えますと名義預金でと判断される可能性高いと思われます。

今回奥様の印鑑で届出ができたようですが、これをもって贈与された認識することは難しいと思われます。
なぜならこの事実をお母様は知らないのかと思いますし、そもそもお母様は認知症であれば認識もできないので贈与は成立しません。

また相続時精算課税も検討されているようですが、お母様の現在の状況(認知症)では、意志表示ができないため贈与は成立しません。
もしお母様に認知症がなければ、預金を一旦正しい名義(お母様)に戻しその後、毎年贈与(基礎控除110万円までは無税)をお勧めするところですが、
現在の状況では、仮に贈与とした場合であっても将来その贈与が否認される可能性が高いと思われます。

最後に相続税に関してですが、2500万円なら15%と記載されていますが、相続税には基礎控除があり法定相続人の数により決まっています。
つまりお母様のすべての財産(名義預金含む)がこの基礎控除以下であれば相続税の申告は不要となります。
なおこの基礎控除は平成27年1月1日より改正(増税)されます。

平成26年12月31日まで 5000万円+1000万×法定相続人

平成27年1月1日より 3,000万円+600万円×法定相続人

お母様の法定相続人は、お父様が先にお亡くなりになられた場合はご兄弟お二人ですので、
26年までの相続は、7000万円の基礎控除となり27年以降は4200万円の基礎控除となります。

将来相続税が発生するかどうか今一度ご確認いただければと思います。

以上簡単ではございますが、回答とさせていただきます。

また一度専門家の方にご相談されることをお勧めします。

回答税理士

2013/7/30 火曜日