ご質問いたします。

●先日、別れた夫から感謝の気持ちとして、3000万円を支払う用意があるとの連絡を受けました。財産分与や慰謝料では御座いません。

●このままでは多額の贈与税を支払うこととなるので、前夫と私との実子に贈与することとしました。

●夫には約2億円の相続財産があります。離婚後、別の方と再婚しております。

【質問1】
この贈与を、私が所有する土地、建物を購入のための、住宅取得等資金の贈与とすることは、問題が御座いますでしょうか。
【質問2】
相続時精算課税制度やその特例を適用したほうがいいのでしょうか。
本当は、綿密な計算が必要なのは承知しておりますが、概算で構いません。
以上、宜しくお願いいたします。

はじめまして。東京都品川区の税理士の八木俊助です。

【質問1】について
住宅取得等資金の贈与税の特例は、その受贈者が直系尊属であることが要件とされておりますので、配偶者が贈与を受けた場合には、この規定の適用はありません。
お子様が適用できるかどうか検討してみるのも手でしょう。
【質問2】について
相続時精算課税制度は、贈与財産2500万円まで、贈与時には、税金がかからず、その後その贈与財産を相続税の対象として相続税を支払うこととなります。
この規定は住宅取得等資金の特例(1000万円の非課税)と合わせて使うことができますので、合計3500万円まで当座は税金を支払ないですむことになります。

【検討事項】
次のような点に注意して話をすすめるとよいと思います。
・土地と建物を購入することは確定事項か?
・確定事項なら、所有者をどうするか?
・贈与は、土地建物の贈与を受けた方がよいのか、取得資金の贈与の方が有利なのか?
・元夫から子へ相続が円滑にすすむのか?

以上、よろしくお願いいたします。

八木俊助税理士事務所

2012/6/18 月曜日

【質問1】
この贈与を、私が所有する土地、建物を購入のための、住宅取得等資金の贈与とすることは、問題が御座いますでしょうか。

1.税法の考え方

(1)住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度のあらまし
父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた受贈者が、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金を自己の居住の用に供する一定の家屋の新築若しくは取得又は一定の増改築等の対価に充てて新築若しくは取得又は増改築等をし、その家屋を同日までに自己の居住の用に供したとき又は同日以後遅滞なく自己の居住の用に供することが確実であると見込まれるときには、住宅取得等資金のうち一定金額について贈与税が非課税となります。

(2)受贈者の要件
次の要件のすべてを満たす受贈者が非課税の特例の対象となります。
1) 次のいずれかに該当する者であること。
イ 贈与を受けた時に日本国内に住所を有すること。
ロ 贈与を受けた時に日本国内に住所を有しないものの日本国籍を有し、かつ、受贈者又は贈与者がその贈与前5年以内に日本国内に住所を有したことがあること。
2) 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属であること。
 なお、直系卑属とは子や孫などのことですが、子や孫などの配偶者は含まれません。
3) 贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること。
4) 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること。

2.本件の場合

あなたは、直系卑属ではありませんので、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税対象に該当しません。

【質問2】
相続時精算課税制度やその特例を適用したほうがいいのでしょうか。

1.税法の考え方
親から住宅取得等資金(注)の贈与を受けた20歳以上(贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者に限られます。)の子が、贈与を受けた年の翌年の3月15日までにその住宅取得等資金を自己の居住の用に供する一定の家屋の新築若しくは取得又は自己の居住の用に供している一定の家屋の増改築等の対価に充てて新築若しくは取得又は増改築等をし、その家屋を同日までに自己の居住の用に供したとき又は同日以後遅滞なく自己の居住の用に供することが確実であると見込まれるときには、住宅取得等資金の贈与者である親が65歳未満であっても相続時精算課税を選択することができます。
※ 非課税の特例の適用を受ける場合には、適用後の住宅取得等資金について贈与税の課税価格に算入される住宅取得等資金がある場合に限り、この特例の適用があります。

(注)
住宅取得等資金とは、贈与を受けた者が自己の居住の用に供する一定の家屋の新築若しくは取得又は自己の居住している家屋の一定の増改築等の対価に充てるための金銭をいいます。

2.本件の場合
あなたは、贈与者との間には親子間の関係がありませんので、相続時精算課税を選択することができません。

その他

本件は、微妙な問題を含んでいますので、あなたが節税を考えるのであれば、多少の経費は必要になりますが、相続に強い税理士にご相談することをお進めいたします。

以上

山口経営会計事務所

2012/6/18 月曜日